秘伝書★
AI総評
本シリーズは、著者の小川そうし氏が自身の体験を基に、プロジェクトマネジメント思考を多様なビジネス課題に応用するノウハウを物語形式で解説した、極めて実践的なビジネス書です。単なる理論紹介に留まらず、具体的な行動指針「to do 99」を提示することで、読者が即座に行動変容を起こせるよう設計されている点は特筆に値します。
物語は架空の企業「MNVトレイル社」を舞台に、主人公である「小鹿」課長がプロジェクトマネジメントの手法と独自の「ビジネス思考の方程式」を用いて解決していく事業再生、営業改革、組織づくりといった普遍的な課題を解決していくプロセスを描いています。
特筆すべきは、最新刊『エピソードS:思いやりは最強の武器説』の登場により、本シリーズが個人の成功譚から、業界全体の課題解決と社会変革を目指すプラットフォーム戦略の指南書へと昇華した点です。「思いやり」を起点に社会課題とビジネスを結びつけるアプローチは、現代のパーパス経営やサステナビリティの観点からも非常に示唆に富んでいます。
本シリーズは、ビジネスパーソン個人の成長を促すだけでなく、組織、ひいては社会全体をより良い方向へ導くための思考法と実践知が詰まった、他に類を見ないビジネス書と言えます。
各エピソードの評価
エピソード3:赤字から稼ぐへ
テーマ:事業再生とプロジェクトマネジメント
〔秘伝書③目次〕「不振の事業再生。ビジネス思考の秘伝52則 エピソード3/赤字から稼ぐへ ~透明性を愛する。高くても売れるサービスづくり~」2022/6/24連載(完)
会社の猫が放つ事業再生・事業覚醒ノベル
内容:ジャンボ宝くじ1等賞金相当の赤字事業を、事業全体を「仮想プロジェクト」と捉え、コンセプト設定からアクションプラン策定、ステークホルダーとの関係構築を通じて5年で黒字化させた軌跡、着実に改革を進めていくプロセスは圧巻です。
評価・着眼点:経営者や事業責任者にとって、困難な状況を乗り越え、持続可能な事業を構築するための具体的なプロセスとマインドセットが学べます。逆境における課題設定力と実行力の好事例です。
エピソード2:売れっこないもの売ってみた
テーマ:営業・マーケティング改革
〔秘伝書②目次〕「営業改革。ビジネス思考の秘伝52則 エピソード2/売れっこないもの売ってみた ~ダメそうなこと+だからいい~」2023/6/23連載(完)
アイデアマンが放つ営業高度化ノベル
内容:「売れっこない」商品を売るため、「懇願営業」から脱却し、顧客の経営課題を解決する「提案営業」へのシフトを具体的に示しています。商品の欠点さえも「だからいい」と利点に変える逆転の発想がユニークです。
評価・着眼点:手土産の選び方からクロージングの技術まで、全ての営業・マーケティング担当者にとって即戦力となる具体的でユニークな知識が満載です。顧客インサイトの把握と価値提案の重要性を物語を通じて体感できます。
エピソード1:人類の祖先、木登り下手説
テーマ:組織づくりと人材育成
〔秘伝書①目次〕「組織づくり。ビジネス思考の秘伝52則 エピソード1/人類の祖先、木登り下手説 ~創意工夫は、やがてみんなを豊かにする~ 」2024/6/21連載(完)
学習する組織の未常識メソッド
内容:固定観念に縛られず、常に挑戦し続ける「学習する組織」の重要性を説いています。弱みや逆境こそが進化の原動力になるというメッセージを通じて、具体的なマネジメント手法を紹介しています。
評価・着眼点:組織論やマネジメントに関心のある方に特におすすめです。リーダー層にとって、変化に強い組織文化を醸成し、メンバーの主体性を引き出すためのヒントが豊富です。1on1や目標設定など、すぐに実践できる手法が紹介されています。
エピソードS:思いやりは最強の武器説
テーマ:新規事業創出とプラットフォーム戦略
〔秘伝書⑤目次〕「スタートアップ。ビジネス思考の秘伝52則 エピソードS/思いやりは最強の武器説(フェーズⅠ:~20X6年3月) ~制約を創造の力に変える~ 」2025/6/20連載開始
スタートアップの未常識メソッド
内容:O&M業界の担い手不足という社会課題に対し、個社の問題解決に留まらず、「思いやり」を起点としたプラットフォーム「ManaviTra」を構築。ステークホルダーを巻き込み、業界全体の変革を目指すスタートアップの物語です。
評価・着眼点:個人のスキルアップから業界・社会へと視座を高めたシリーズの集大成です。現代的なプラットフォーム戦略、パーパス経営、コミュニティ形成の好事例であり、新規事業開発者や経営層にとって必読の内容と言えます。
シリーズ全体の強みと特筆事項
- 物語形式による圧倒的な読みやすさ:難解なビジネス理論も、物語として読むことで直感的に理解できます。
- 「to do 99」という具体的な行動指針:各章で紹介される「to do」リストが、読者の具体的な行動を促します。
- 普遍的なフレームワークの提示:独自の「ビジネス思考の方程式〔目標設定力× √(観察力× 想像力 × 行動力)=いいこと〕」は、あらゆるビジネスシーンで応用可能な思考ツールです。
- 挑戦を恐れないマインドセットの醸成:一貫して失敗から学ぶことの重要性を説いており、読者に挑戦する勇気を与えてくれます。
- 成長の段階的スケールアップ:個人の課題解決(再生、営業、組織)から、業界全体の課題解決(プラットフォーム構築)へと、読者の視座を自然に引き上げる構成が秀逸です。
結論・提言
『ビジネス思考の秘伝52則』シリーズは、単なるノウハウ本ではありません。仕事への向き合い方やマインドセットそのものを変革する力を持つ「行動変容のガイドブック」です。
物語を楽しみながら、実践的なスキルと困難に立ち向かう勇気を得られる本シリーズは、以下の観点から、全ビジネスパーソン、特に次世代のリーダーや新規事業開発担当者に強く推奨します。
- 社内研修のテキストとしての活用: 若手から管理職まで、階層別の課題に応じた学びを提供できます。
- 新規事業立案時の参考図書: 特に『エピソードS』は、社会課題解決型のビジネスモデルを構想する上で、絶好のケーススタディとなります。